【ヒット商品のマーケティング事例】「しゅくだいやる気ペン」がヒットした理由

ヒット商品のマーケティング

皆さんは「しゅくだいやる気ペン」という商品を知っていますか?

アタッチメントを市販の鉛筆に取り付け、専用のスマホアプリと連動させることで、子どもの日々の勉強への取り組みを見える化し、勉強の意欲を高めるというIoT(Internet Of Things:モノとインターネットをつなぐ)文具です。

アタッチメントには加速度センサーが内蔵されており、ペンの振動回数などから勉強時間を計測。専用アプリから、勉強への取り組みを「やる気パワー」として可視化することができます。

コクヨ『しゅくだいやる気ペン』

画像:コクヨ 2020年3月10日プレスリリース

【コクヨ公式】かきたくなる。ほめたくなる。しゅくだいやる気ペン
いつもの鉛筆に付けるだけ。勉強への取り組みを分析して見える化します!子どもはかきたくなる。親はもっとほめたくなる。家庭学習の習慣化をサポートするまったく新しいタイプのIoTペンです。

2019年に文具メーカーのコクヨから発売された本商品は、発売後すぐにメディアで多く取り上げられ、初回生産分はすぐに完売。
6,980円(税込)という価格ながら、現在まで発売本数1万5千本を突破し、2020年には日経MJが選ぶ「ヒット商品番付」にも選出されました。

本記事では、なぜ「しゅくだいやる気ペン」がここまでヒットしたのか、マーケティングの観点からヒットの理由を解明し、皆様のお仕事に役立つトピックをお伝えします。

本記事を書いた人

リコッタ
リコッタ

大学でマーケティングを専攻し、花王や食べログでマーケティングに5年以上従事。多くの新製品や新規事業を立ち上げてきました。

『しゅくだいやる気ペン』がヒットした理由

しゅくだいやる気ペンがヒットした背景には、消費者の生声からヒントを得た、コクヨならではの着眼点がありました。
本記事では、以下3つのポイントから解説していきます。

『しゅくだいやる気ペン』がヒットした3つのポイント

  • 「宿題」と「やる気」に焦点を当てた着眼点
  • ユーザーの「生の声」へのこだわり
  • メディアが取り上げたくなる仕掛け

ヒットの理由① 「宿題」と「やる気」に焦点を当てた着眼点

子ども向けの学習コンテンツには、ドリルやオンライン学習など、コンテンツ自体で差別化している商品が主流です。

一方、やる気ペンでは学習コンテンツは提供していません。勉強を自分で続けるための「やる気」を提供しています。

目指したのは親が子どもを褒めるきっかけとなるようなツールでした。
親が「勉強しなさい」と追い込むばかりでは、子は逆にやる気を失うこともしばしば。そこで、やる気を見える化することで、子どもが自分から勉強をしたくなる「仕組み」を作ろうとしたのです。

例えば、勉強を続けるとその時間に応じてアタッチメントが10段階の色に光り、がんばりが目で見てわかるようになっています。
また、アプリにやる気ペンをかざすと、溜まったやる気パワーに応じてさまざまなアイテムを収集でき、ゴールに達すれば親からごほうびをもらえるという仕組みになっており、親と子のコミュニケーションにもつながっています。

やる気パワーに応じて光る専用アタッチメント

画像:コクヨ 2020年3月10日プレスリリース

昨今はオンライン学習など、学校の勉強プラスαのコンテンツも多いですが、子どもが日々立ち向かうのは学校の宿題
IoTを活用して鉛筆というアナログな道具とつなげることで、子どもが日々手で行う宿題のやる気を高める、という発想はとても画期的なものでした。

この今までにない発想力が、親と子ども両方のニーズをくみ取ったのです。

学習内容ではなく「やる気」へアプローチすることで、今まで汲み取れていないニーズを発掘してヒット
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ヒットの理由② ユーザーの「生の声」へのこだわり

実はコクヨが元々作ろうとしていたのは、子どもの見守りに役立つツールでした。

共働き世帯の増加という社会的背景から、仕事中の親が子供を見守りたいという需要が増加すると予測したのがきっかけでした。
筆記具をIoT化することで、子供が勉強している様子を親がスマホで見守れる機能を付けようとしていたのです。

しかしながら試作品を作って消費者にヒアリングすると、ほとんどの家庭で「子どもを見守ることはできている」という答えが返ってきました。見守りに役立つツールにはニーズがなかったのです。

この結果を基にコンセプトを大きく変えたコクヨは、更なるユーザーの声を聞くためクラウドファンディングにチャレンジ。
「ひみつの企画会議」という名のもと、親子で商品を実際に試してもらい、親と子の両方から意見を聞きました。

やる気ペンチーム クラウドファンディング

いつもの鉛筆が変わる?!子どものやる気を育てるIoTペン誕生へ - クラウドファンディング READYFOR (レディーフォー)
いつもの鉛筆が変わる?!コクヨ株式会社が子どものやる気を育てるIoTペン「しゅくだいやる気ペン」を開発へ。 - クラウドファンディング READYFOR

このように、本商品の開発ではユーザーに試作品を使ってもらい、意見を聞いて修正する、ということを何度も繰り返してきました。

特に新しい技術を搭載した商品づくりは”モノ”が主役になりがちですが、実際に日々使うのは”ユーザー”です。ユーザーの声からニーズをくみ取り、何度も修正してきたことが、今日の成功につながっているのでしょう。

多くのユーザーから声を拾うことでニーズを正確にくみ取り、より良い商品づくりにつながる

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ヒットの理由③ メディアが取り上げたくなる仕掛け

本商品は、CMなど大々的なプロモーションは行っていません。
販路も当初は公式サイトのみ。文具店や家電量販店などには配荷しなかったのです。

それにも関わらずここまでヒットした背景には、メディアから多く取り上げられたことが大きな要因です。

メディアが取り上げたくなる商品には大きなポイントがあります。
それは「意外性」と「ドラマ性」です。

意外性とは、アイディア自体の珍しさや新鮮さです。
よくある商品を紹介しても視聴者の目には留まりません。珍しい商品や意外なアイディアが紹介されることで、「こんな商品が世の中にあるんだ!」と視聴者の目を惹くのです。

ドラマ性とは、商品発売の背景にあるストーリーです。
例えば、商品開発にこんな苦労があった、こんなきっかけがあって発売したなどのドラマがあれば、記事化しやすくなり、視聴者の興味を引きます。

本商品にはそのどちらも備わっています。
やる気を引き出す、という新しいコンセプトのIoT文具という新鮮さ、約3年費やした開発ストーリー。本商品の意外性や発売までのドラマ性には、メディアが取り上げたくなる要素が詰まっています。

そしてメディアに取り上げられ、多くの人に認知されたことで、ヒットにつながりました。

同様に、オンラインでひっそり売っていたのに、メディアに取り上げられたことでヒットした「線路の石の缶詰」という商品があります。合わせてご覧ください。

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メディアが取り上げたくなるポイントを押さえることで、自発的に話題が広がる

『しゅくだいやる気ペン』 ヒットの理由まとめ

以上をまとめると、「しゅくだいやる気ペン」がヒットした理由は以下3点と考えられます。

『しゅくだいやる気ペン』がヒットした3つのポイント

  • 「宿題」と「やる気」に焦点を当てた着眼点
  • ユーザーの「生の声」へのこだわり
  • メディアが取り上げたくなる仕掛け

以上、しゅくだいやる気ペンがなぜヒットしたのか、背景にあるマーケティングについて分析しました。

この機会にヒット商品をチェックしよう!

 

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