【ヒット商品のマーケティング事例】トヨタ自動車「ヤリス」が首位を独走し続ける理由

ヒット商品のマーケティング

日本自動車販売協会連合会(自販連)の発表している自動車の新車登録台数で3連覇(2017-2019年)を果たしていたホンダの軽自動車「N-BOX」。その牙城が20年度(2020年4月~21年3月)にある自動車によってついに崩されました。

それが今回紹介するトヨタ自動車のコンパクトカー『ヤリス』です。

トヨタ自動車「ヤリス」

トヨタ ヤリス | トヨタ自動車WEBサイト
トヨタ ヤリス の公式サイト。デザイン・スタイリング(外観)や走行イメージ、室内空間・内装などをご覧いただけます。

2020年2月に旧型「ヴィッツ」のモデルチェンジとして発売され、同年6月にはスポーツタイプ「GRヤリス 」8月にはSUVモデル「ヤリス クロス」が発売。
2021年5月現在、新車登録台数で11か月連続首位を獲得しています。

本記事では、なぜ「ヤリス」がここまで売れたのか、ヒットの背景にあるマーケティング戦略を解明し、皆様の仕事に役立つトピックをお伝えしていきます。

本記事を書いた人

リコッタ
リコッタ

大学でマーケティングを専攻し、花王や食べログでマーケティングに5年以上従事。多くの新製品や新規事業を立ち上げてきました。

「ヤリス」が売れた理由

トヨタ自動車「ヤリス」がここまで売れている背景には、消費者ニーズを捉えたマーケティング戦略がありました。

本記事では大きく3つのポイントにまとめて分析していきます。

 「ヤリス」がヒットした3つのポイント

  • 消費者インサイトを捉えた『コンパクト』×『軽快な走り』
  • コンパクトカーでは異例のラインナップの豊富さ
  • チャネル統合による販路拡大

ヒットの理由① 消費者インサイトを捉えた『コンパクト』×『軽快な走り』

近年の自動車ニーズのトレンドとして、街乗りや使い勝手を重視する人には「コンパクトカー」、遠出をする人や走りを重視する人には「SUV」が人気であるという点が挙げられます。

特にコンパクトカーの人気は高く、自販連が発表した2021年3-4月の新車登録台数(小型/普通車・軽自動車は含まれない)においては、上位10ブランドのうち5つがコンパクトカーとなっています。

2021年3-4月小型/普通車 新車登録台数ランキング

順位 ブランド メーカー  タイプ
1 ヤリス トヨタ コンパクト+SUV
2 ライズ トヨタ SUV
3 カローラ トヨタ セダン
4 アルファード トヨタ ミニバン
5 ルーミー トヨタ コンパクト
6 フィット ホンダ コンパクト
7 ハリアー トヨタ SUV
8 フリード ホンダ コンパクト
9 ヴォクシー トヨタ ミニバン
10 ノート 日産 コンパクト

※日本自動車販売協会連合会 乗用車ブランド通称名別順位 (車種タイプは各社HP)より引用

コンパクトカーが人気の理由としては、単身世帯やシニア層などを中心に、少人数で近場を移動するニーズが増えているからです。また、価格帯が低いことからセカンドカーとしても購入されています。

ヤリスが好調に売れている理由の1つには、コンパクトカーを求めるユーザーニーズに応えた「コンパクト」と「走り」の両立という点が挙げられるでしょう。

従来のコンパクトカーは、「コンパクトなのに中は広い」という室内空間にスポットを当てた商品が多いのが特徴でした。

一方ヤリスは、「軽快な走り」という走行性能の高さを前面に訴求しています。
爽快な走りと優れた燃費性能を両立する新開発エンジンや、先行車を追従してステアリング操作をサポートするレーントレーシングアシスト機能。この走行性能の高さにこだわった商品開発がヤリスの最も大きな特徴です。

走行性の高さを実現するため旧型「ヴィッツ」と比べて後部座席は狭くなっており、他社が訴求している「室内空間の快適さ」はいわば捨てているともいえます。

この選択と集中により走行性に特化したことが、「そんなに遠出はしないけれど、実は走りを楽しみたい」というユーザーインサイトを捉えたのでしょう。

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ヒットの理由② コンパクトカーでは異例のラインナップの豊富さ

ヤリスがヒットした2つ目の理由は、そのラインナップの豊富さです。

ヤリスのメーカー希望小売価格は「1,395,000円(税込)〜2,522,000円(税込)」となっています。約100万円近く価格帯に幅があるのは、コンパクトカーとしては異例のことです。

まずエンジンのラインナップは、ベーシックな3気筒1000ccと、新開発1.5リッター 3気筒、さらに1.5リッターとモーターを組み合わせたハイブリッドの3タイプが用意されています。
駆動方式はFF(前輪駆動)を基本とし、1.5とハイブリッドには4WDの設定もあります。さらに1.5ガソリン(FF)には、希少なMTも選択可能となっています。

また、それぞれ「X」「G」「Z」の3グレードが用意されており、価格帯やニーズに応じて細かく選択することが可能です。

更に、ヤリスブランドには、コンパクトカー 「ヤリス」の他に、コンパクトSUV「ヤリスクロス」、スポーツタイプ「GR ヤリス」という車種も用意されています。

この異例といえるほどのラインナップの豊富さが、多くのユーザーニーズを捉えシェアを伸ばしているのでしょう。

ヒットの理由③ モデルチェンジに伴う販路拡大

かつての日本のクルマ販売は、店舗によって扱っている車種が違う「チャネル販売制」が一般的でした。
チャネルによって販売する車種を変えることで、ディーラーは深い商品知識を持って販売することができ、またチャネルごとでターゲットやコンセプトも明確になるというメリットがありました。

しかしながら自動車市場の縮小によるコスト削減を背景に各社チャネル統合が進み、トヨタにおいても2020年5月、トヨタ、トヨペット、カローラ、ネッツの4つの販売チャネルが統合されました。

その結果、旧型ヴィッツはネッツ店のみの扱いでしたが、新ヤリスでは4つのチャンネル全店で扱われるようになり、販路が約3倍にまで拡大したのです。

販売店舗のカバー率である「配荷率」は売上を構成する要素の1つであり、配荷率が伸びるとブランドの売上は大きく伸長します。

 あるブランドの売上数量の因数分解

(ターゲット人口)×(認知率)×(配荷率)×(購入率)×(購入回数)×(購入本数)

こうした販売網の変化が、ヤリスの販売台数が押し上げた要因の1つでしょう。

ヤリス ヒットの理由まとめ

以上をまとめると、トヨタ「ヤリス」がヒットした理由は以下3点と考えられます。

 「ヤリス」がヒットした3つのポイント

  • 消費者インサイトを捉えた『コンパクト』×『軽快な走り』
  • コンパクトカーでは異例のラインナップの豊富さ
  • チャネル統合による販路拡大

20年12月には日産コンパクトカー「ノート」、21年4月にはホンダコンパクトSUVの「ヴィゼル」が改良するなど、競合各社の改良が続いています。
今後のコンパクトカー市場にも注目したいですね。

以上、「ヤリス」がなぜここまで売れたのか、ヒットの背景にあるマーケティング戦略の分析でした。

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