【ヒット商品のマーケティング】史上初!「ボカロで覚える参考書」がヒットした理由

ヒット商品のマーケティング

1年間で1万部の売上が通例といわれている中学参考書の市場において、発売2か月で13万部を突破する大ヒットとなった参考書があります。

それが今回紹介する学研プラスから出版された「MUSIC STUDY PROJECT ボカロで覚える」シリーズです。

MUSIC STUDY PROJECT ボカロで覚える中学歴史(Amazon外部リンク)

ボカロとは、歌声合成ソフト「VOCALOID(ボーカロイド)」で制作された曲のこと。
今回紹介する「ボカロで覚える」シリーズは、重要単語を入れ込んで制作されたオリジナルソング全10曲を収録した音楽CDが付いた参考書です。

2016年の発売後、史上初ボカロ楽曲付き参考書として話題を集め、シリーズ累計50万部を突破。現在では高校版の参考書も登場しています。

本記事では、なぜボカロで覚える参考書がヒットしたのか、マーケティングの観点からヒットの理由を解明し、皆様のお仕事に役立つトピックをお伝えします。

本記事を書いた人

リコッタ
リコッタ

大学でマーケティングを専攻し、花王や食べログでマーケティングに5年以上従事。多くの新製品や新規事業を立ち上げてきました。

『ボカロで覚える参考書』がヒットした理由

ボカロで覚える参考書がヒットした背景には、中学生の心を捉えた斬新な発想と、コンテンツへの工夫がありました。
本記事では、以下3つのポイントから解説しています。

『ボカロで覚える参考書』がヒットした3つのポイント

  • 「参考書」×「ボカロ」という斬新な組み合わせ
  • Youtube世代に刺さったMV活用
  • 潜在ターゲットを取り込んだ「楽しむ」コンテンツ

ヒットの理由① 「参考書」×「ボカロ」という斬新な組み合わせ

ボカロで覚えるシリーズ最大の特徴は、「参考書×ボカロ」という今までにない組み合わせです。

ボカロとは元々、VOCALOIDなど人口音声を用いて打込みで作られる音楽ジャンルのことで、2007年頃からニコニコ動画を中心に流行しました。
最近ではバルーンの「シャルル」やAdoの「うっせぇわ」、Yoasobiの「夜に駆ける」など、ボカロ出身のアーティストが、若年層を中心に注目を集めています。

10代カラオケランキング3位を記録*した人気ボカロ曲「シャルル/バルーン」

*JOYSOUND「2020年 年代別カラオケ年間ランキング」より

近年は少子化により、学習参考書の市場は年々競争が激しくなっています。そこで、「いまどきの中学生に響く、まったく新しい参考書を作りたい」という思いから、中学生に人気の「ボカロ」に目をつけたのが同商品の着想でした。

ターゲットは、ボカロ曲を聴きながらファッション誌も読むような、一般的な中学生。同商品の楽曲は紅白歌合戦で小林幸子さんが歌った「千本桜」の黒うさPなどの人気プロデューサーを起用し、勉強に必要な重要単語を盛り込んで作成されています。

先行公開された試聴動画の視聴者からは「なんだこれ…!?」「メンバーが豪華すぎww」「これは覚える!」など話題となり、発売前からAmazonデイリーランキングで1位を獲得するほど注目を集めました。

 「ボカロで覚える歴史/理科」収録曲 試聴動画

参考書という”お堅い”分野において、ボーカロイドという中学生が興味を持つアイディアを組み合わせることで、今までにない商品として話題となりました。この斬新な組み合わせによって独自のポジショニングを形成し、大きなヒットにつながったのでしょう。

業界の常識にとらわれず、ターゲットが興味を持つアイディアを組み合わせることで、今までにないポジションを形成する

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この機会にヒット商品をチェックしよう!

ヒットの理由② Youtube世代に刺さったMV活用

ボカロで覚えるシリーズは、曲だけでなく動画をうまく活用していることも人気の理由です。

本商品には音楽CDだけでなく、MV(ミュージックビデオ)風のオリジナル動画が用意されており、Youtubeで視聴できる仕組みとなっています。

スマホを参考書のページ上のマーカーにかざすと映像が再生される

 画像:学研ホールディングス 2016年4月19日プレスリリースより

動画では、覚えるべき単語や学習内容を解説するイラストが映像に散りばめられています。例えば、収録曲の1つに〈異論(160)は認(3)めぬ 徳川家康 大江戸幕府盛大にGo!〉という一節がありますが、映像に1603と徳川家康が登場するため、その二つをセットで暗記することができます。
耳だけでなく目からも見ることで、より記憶に残りやすい仕掛けとなっているのです。

制作においては、学習内容が映像を通して頭に残るよう工夫した一方で、「いかにも学習用動画」な“ダサさ”から一線を画し、テンポの良いスタイリッシュな仕上がりになるようこだわり抜いたそうです。

「ボカロで覚える中学歴史」収録曲 MV画像

 画像:Youtube「アンキ厨はアンキ中 ~To the next ERA!/初音ミク・鏡音リン」より

いまの10代は、小さい頃から当たり前にYoutubeに触れてきたスマホネイティブ世代。参考書は読みたくなくても、動画は抵抗なく見ることができる学生は少なくないでしょう。

Youtube世代に合わせて動画をうまく活用することで、抵抗なく学習でき、かつ暗記しやすい。学研の知見をターゲットに合わせて昇華させた、素晴らしいアイディアです。

商品自体だけでなく、ターゲットにいかにリーチするかが重要

ヒットの理由③ 潜在ターゲットを取り込んだ「楽しむ」コンテンツ

通常、学習参考書といえば、学校の勉強を補完するものが一般的です。そのため体系的かつ網羅的な内容、つまり情報量が多いものがほとんどです。

一方ボカロで覚えるシリーズは、逆に重要なポイントに絞り、読みやすくしています。これは、勉強以上に”やる気”を引き出すことを意識していることが伺えます。

例えば、参考書は全ページフルカラーで構成されており、各曲のイメージイラストが多く活用されています。曲の歌詞やその範囲の解説、歌詞の穴埋めで要点をチェックする問題が主なコンテンツ内容です。

参考書の歌詞ページと解説ページ

 画像:学研ホールディングス 2016年4月19日プレスリリースより

学習参考書を買う人の多くは、受験や勉強に意欲的な学生でしょう。しかし実際には、勉強に苦手意識があったり、あまり意欲的になれない学生の方が多いのも事実。学研はそこに目をつけました。

勉強に集中するのが難しくても、「楽しい」と思うことができれば取り組むことができる。今まで参考書がターゲットにしてきた「勉強に意欲的な学生」ではなく、「そこまで勉強に意欲的でない学生」にアプローチし、やる気を引き出すことに重きを置いたコンテンツを作ったことが、同商品が売上を大きく伸ばした理由でしょう。

あえて情報量を削り「楽しむ」コンテンツを意識したことで、潜在ターゲットを取り込んで成功

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『ボカロで覚える参考書』 ヒットの理由まとめ

以上をまとめると、ボカロで覚える参考書がヒットした理由は以下3点と考えられます。

『ボカロで覚える参考書』がヒットした3つのポイント

  • 「参考書」×「ボカロ」という斬新な組み合わせ
  • Youtube世代に刺さったMV活用
  • 潜在ターゲットを取り込んだ「楽しむ」コンテンツ

「ボカロ」と「参考書」という一見接点のなさそうな組み合わせから、新たな市場の開拓に成功した好事例ですね。

以上、ボカロで覚える参考書がなぜヒットしたのか、背景にあるマーケティングについて分析しました。

この機会にヒット商品をチェックしよう!

 

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