【ヒット商品のマーケティング事例】味の素「ザ★」シリーズが売れた理由

ヒット商品のマーケティング

皆さんは、冷凍食品「ザ★」シリーズを知っていますか?

味の素冷凍食品『ザ★チャーハン』

「ザ★」シリーズは、 “外食店品質” がコンセプトの、味の素冷凍食品から発売されている冷凍食品です。食べたことはなくとも、小栗旬さんが出演されているTVCMを見たことがある方は多いのではないでしょうか。

同シリーズ最初の商品となる「ザ★チャーハン」は、2015年に発売され、これまで冷凍米飯・冷凍焼売を購入していなかった新規ユーザーを獲得(*1)。
2016年には「ザ★シューマイ」、2020年に「ザ★から揚げ」とラインナップを増やし、「ザ★から揚げ」に関してはなんと日経トレンディで2021年上期のヒット商品(*2)にも選ばれました。

*1 味の素冷凍食品 プレスリリースより
*2 日経XTREND「21年上半期にヒットした商品は? 大賞14商品を一挙紹介」より

今回は、競合商品がひしめく冷凍食品市場の中、「ザ★」シリーズがなぜヒットしたのか、ヒットの背景にあるマーケティング戦略を解明し、皆様のお仕事に役立つトピックをお伝えできればと思います。

本記事を書いた人

リコッタ
リコッタ

大学でマーケティングを専攻し、花王や食べログでマーケティングに5年以上従事。多くの新製品や新規事業を立ち上げてきました。




「ザ★」シリーズ ヒットの理由

ザ★シリーズが売れた理由について、「美味しいから」「本格的な味だから」などの声がよく聞かれますが、マーケティング観点で売れる仕掛けが隠されていました。

本記事では以下3つのポイントから、同シリーズが売れた理由を解説します。

 『ザ★』シリーズがヒットした3つのポイント

  • あえて購入者以外を狙ったターゲティング戦略
  • 「手軽なのに外食店品質」を実現した商品開発力
  • 広告・パッケージに隠されたブランディングの仕掛け

ヒットの理由① あえて購入者以外を狙ったターゲティング戦略

まず、冷凍食品は主に誰が買っているのでしょうか?

日本冷凍食品協会が2019年行った調査(*3)によると、「自分で買っている」と答えた人は女性が約9割、男性は約5割となっており、ファミリー層などを中心に、女性客が多く購入していることがわかります。

*3 日本冷凍食品協会 “冷凍食品の利用状況”実態調査2019より

そういった背景もあり、冷凍食品各社は主に女性をターゲットとした商品展開を行ってきました。特におかず系の冷凍食品に関しては、「お弁当用」と書かれた小分けされた商品群が目立っていますよね。

ザ★シリーズは、逆に男性客にターゲティングを行い、男性客が好む濃い味付けとボリューム感ある商品展開を行いました。これが、「おかずとして食べるにはボリュームが足りない」「がっつり食べたい」という男性のインサイトをつかみ、競合との差別化に成功したのです。

冷凍食品は購入の中心が女性ですが、実際に多く口にするのは男性や子どもです。
男性が食べたくなるような商品にすることで商品の差別化になり、女性による代理購買にもつながりました。さらに、今まで冷凍食品を買っていなかった男性層の購買にもつながっています

このターゲティングスイッチとターゲットニーズの発掘は、冷凍食品において「ありそうでなかった」着眼点でした。まさにターゲティングの成功事例です。

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ヒットの理由② 「レンジ調理なのに外食店品質」を実現した商品開発力

冷凍食品は、手軽に作れることと、商品ラインナップの豊富さが、大きな購買理由です。
そんな中、手軽さはそのままに「外食店品質」という新たな付加価値を加えたのが同シリーズでした。

レンジ調理なのに、お店のような味とボリューム感。少し価格は高いですが、このコンセプトが「手間はかけたくないが、より美味しいものが食べたい」という消費者のインサイトを捉え、購買につながりました。

レンジ調理で「外食店品質」を実現するのは簡単ではなかったことでしょう。
商品開発においては、食べてからの時間など、様々な変数を動かしたときに味がどう変わるかといった細かな調整を行いながら商品開発を行ったそうです。
これは、味の素の多くの経験による知見があるからこそ成せたといえます。

「レンジ調理」なのに「お店のような仕上がり」という、トレードオフな2つの価値を実現できた商品開発力が、ヒットの理由の2つ目と考えられます。

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ヒットの理由③ 広告・パッケージに隠されたブランディングの仕掛け

ザ★シューマイのTVCMを見たことがありますか?

小栗旬さんが中華料理屋で一心にシューマイを食べており、背景には入っている具や溢れる肉汁などを表現するナレーションがとめどなく流れ、最後に印象的な黒いパッケージがドンと映ります。

ザ★シューマイ TVCM動画

美味しそうな様子とナレーションが、食欲をそそりますよね。

実はこのCM、よくできています。

まず、視覚から直感的に、中華料理屋さんのような「お店の味」というイメージが残り、ナレーションによって消費者の脳内に「食べたときのイメージ」を醸成し、食欲を湧かせます。

最後には、黒い背景に金文字で訴求が埋められたパッケージが画面いっぱいに登場し、CMと商品が紐づいて印象に残ります。

そして、このCMを見た人が後日冷凍食品の売り場に行くと、明るい色味が多い冷凍食品売り場において黒いパッケージはひと際目立ち、目に留まります。

更に、金文字で埋められた訴求を見て「あ、あの中華屋のCMの商品だ!」と、広告が想起されるという仕掛けになっています。

このように、広告とパッケージの両面から、認知から購買のシーンまで「外食店品質」を想起させるという仕掛けになっているのです。このブランディング戦略が、立ち上げ初期から「飲食店品質」というブランドイメージ形成に成功できた理由といえるでしょう。

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「ザ★」シリーズヒットの理由 まとめ

本記事をまとめると、「ザ★」シリーズがヒットした理由は以下3点と考えられます。

 『ザ★』シリーズがヒットした3つのポイント

  • あえて購入者以外を狙ったターゲティング戦略
  • 「手軽なのに外食店品質」を実現した商品開発力
  • 広告・パッケージに隠されたブランディングの仕掛け

以上、ザ★シリーズのヒットの裏側について解説しました。




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