【ヒット商品のマーケティング事例】「線路の石」の缶詰が即完売する理由

ヒット商品のマーケティング

鉄道線路に敷かれた普通の「石」が売れているのを知っていますか?

えちごトキめき鉄道、銚子電気鉄道、天竜浜名湖鉄道の三社がそれぞれの線路の石を缶詰に詰めてセットにした「線路の石 缶詰セット」を販売したところ、3缶で1,500円という価格にもかかわらず1週間ほどで完売。

現在では第3弾まで発売し、計6000個以上を売り上げています。

ヒット商品「線路の石」の缶詰

 ※えちごトキめき鉄道社長(いすみ鉄道前社長) 鳥塚亮の地域を元気にするブログ – 売るものがなければ夢を売れ!」より

本記事では、なぜ「線路の石」がここまでヒットしたのか、背景にあるマーケティング戦略を解明し、皆様のお仕事に役立つトピックをお伝えします。

本記事を書いた人

リコッタ
リコッタ

大学でマーケティングを専攻し、花王や食べログでマーケティングに5年以上従事。多くの新製品や新規事業を立ち上げてきました。

『線路の石の缶詰』がヒットした理由

「線路の石 缶詰セット」は2020年6月より発売されました。

発案者はトキめき鉄道の鳥塚社長。原価を抑えて長期保存できるものとして、このアイデアを思いついたそうです。

線路の石がヒットした背景には、「石」に込められた物語を活かしたアイディアがありました。
本記事では、以下3つのポイントから解説していきます。

『線路の石 缶詰セット』がヒットした3つのポイント

  • 石ではなく「歴史」を販売
  • メディアが取り上げたくなる「意外性」と「ドラマ性」
  • 消費者の購買欲をくすぐる希少性の高さ

ヒットの理由① 石ではなく「歴史」を販売

消費者が原価0円の石に1,500円を払っているのは、石自体ではなくその背景にある「歴史」に付加価値を感じているからです。

そもそも線路の石は鉄道の重量を支えて衝撃を吸収するのが主な目的。
本商品に使われている石は「玉砂利」という国鉄時代から線路を支えてきた石。約半世紀以上にわたり、雨や雪を耐えしのぎながら、鉄道の安全な輸送を守ってきました。

缶を空けて石を見ると少し赤くなっており、これは、昔の車両がブレーキをかけたときに飛び散った鉄粉によるものだそうです。

「石の缶詰」中身

 ※えちごトキめき鉄道社長(いすみ鉄道前社長) 鳥塚亮の地域を元気にするブログ – 売るものがなければ夢を売れ!」より

どこか縁起の良さも感じる本商品。手元にあるだけで半世紀の歴史を身近に感じられるという体験に、消費者は1,500円を払うのでしょう。

線路の石という身近な商品に、「歴史」という付加価値を見出した点が成功要因の1つ目です。

人は商品自体だけでなく「付加価値」にお金を払う

ヒットの理由② メディアが取り上げたくなる「意外性」と「ドラマ性」

本商品は特にプロモーションは行っておらず、発売時のプレスリリースすら打っていません。販売も当初はオンラインのみでした。

線路の石 缶詰セット :2094:えちごトキめき鉄道公式ショップ - 通販 - Yahoo!ショッピング
鉄道の歴史を感じる「線路の石」缶詰セット【セット内容及び採取者】・えちごトキめき鉄道 二本木駅構内  鳥塚社長・銚子電鉄      仲ノ町駅構内  竹本社長・天竜浜名湖鉄道   天竜二俣駅構内 長谷川社長【内   容】・線路の玉砂利【製 造 者】・えちごトキめき鉄道株式会社【注 意 事 項】・この缶詰はたべものではあり...

それにも関わらず多くの人に認知された背景には、メディアから多く取り上げられたというのが大きな理由です。

本商品発売後、発売元である鉄道会社にはメディアからの取材が殺到。地元の新聞やテレビだけでなく、NHKニュースやカンブリア宮殿に登場しました。

メディアが取り上げたくなる商品には大きなポイントがあります。
それは「意外性」と「ドラマ性」です。

意外性とは、アイディア自体の珍しさや新鮮さです。
よくある商品を紹介しても視聴者の目には留まりません。珍しい商品や意外なアイディアが紹介されることで、「こんな商品が世の中にあるんだ!」と視聴者の目を惹くのです。

ドラマ性とは、商品発売の背景にあるストーリーです。
例えば、商品開発にこんな苦労があった、こんなきっかけがあって発売したなどのドラマがあれば、記事化しやすくなり、視聴者の興味を引きます。

本商品には「意外性」「ドラマ性」のどちらも備わっています。

発案者の鳥塚社長はいすみ鉄道社長時代から「アイディア経営」で注目を集めてきました。
赤字に悩む鉄道会社の社長が、その活路として「石の缶詰」というアイディア商品を販売。さらに初回250セットは即完売するほどの人気。

この発売までのドラマ性と商品自体の意外性には、メディアが取り上げたくなる要素が詰まっていました。

そしてメディアに多く取り上げられたことで、オンラインのみでひっそりと販売されていた本商品の認知が全国的に広がったのです。

メディアが取り上げたくなるポイントを押さえることで、自発的に話題が広がる

ヒットの理由③ 消費者の購買欲をくすぐる希少性の高さ

「限定30名様」「即完売」といった言葉を目や耳にするとつい欲しくなることがありますよね。これを心理学で “希少性の原理” と言います。

希少性の原理とは、手に入りにくいものや数が少ないものほど、それが欲しくなるという心理的な作用です。
本商品では、この”希少性”が消費者にうまく働いたこともヒットの要因です。

最初に本商品を見つけた人は、鉄道が好きな層でしょう。鉄道に関するグッズは「鉄道自体」に関するものがほとんど。線路、しかもそこに敷かれている「石」は盲点であり、誰も商品として目をつけていなかったのです。

石の缶詰に使われている石は、各社社長や幹部層が自ら線路に足を運び選んだもの。
さらに第一弾では限定250セットという制限もあり、そのアイディアと希少性の高さから、鉄道が好きなユーザー層の心に刺さったものと考えられます。

第一弾が即完売したことで更に希少性は上がりました。「そんなに人気なら買ってみようかな」と思うフォロワー層まで広がり、第二弾、第三弾ともに成功を収めたのです。

鉄道愛を活かした唯一無二のアイディアによる希少性が、消費者の購買欲をくすぐったのでしょう。

誰かにとっての”希少性”を見出すことで、その人の購買欲をくすぐる

『線路の石の缶詰』ヒットの理由まとめ

以上をまとめると、「線路の石の缶詰」がヒットした理由は以下3点と考えられます。

『線路の石 缶詰セット』がヒットした3つのポイント

  • 石ではなく「歴史」を販売
  • メディアが取り上げたくなる「意外性」と「ドラマ性」
  • 消費者の購買欲をくすぐる希少性の高さ

一見価値のないように思える身近なものに付加価値を見出し、うまく話題化させた素晴らしい事例です。

以上、線路の石の缶詰がなぜヒットしたのか、背景にあるマーケティング戦略の分析でした。

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