【ヒット商品のマーケティング】大阪の中小企業が大ヒット工具「ネジザウルス」を生み出せた理由

ヒット商品のマーケティング

DIYが流行っている昨今、ネジを外そうとドライバーでいじっているうちに、溝が潰れてうまく外れなくなった経験がある方も少なくないのではないでしょうか。
そんな人にぴったりの工具「ネジザウルス」が、世界的ヒットを続けています。

ネジザウルスGT(Amazon外部サイト)

溝が潰れてしまったり、錆びてしまったネジも簡単に外すことができる工具「ネジザウルス」は、2002年の発売以降、シリーズ累計500万本を超える大ヒットを記録。
年間1万本売れればヒットとされる市場で、年間国内30万本、海外10万本を販売しています*。
製造・販売を行うのは大阪市にある社員数40名の中小企業「エンジニア」です。

*ダイアモンドオンライン「日本のガラパゴス工具「ネジザウルス」が世界中で飛ぶように売れる理由

本記事では、なぜ大阪の中小企業が「ネジザウルス」を世界的に大ヒットさせることができたのか、マーケティングの観点からヒットの理由を解明し、皆様のお仕事に役立つトピックをお伝えします。

本記事を書いた人

リコッタ
リコッタ

大学でマーケティングを専攻し、花王や食べログでマーケティングに5年以上従事。多くの新製品や新規事業を立ち上げてきました。

『ネジザウルス』がヒットした理由

ネジザウルスがヒットした背景には、失敗を恐れないチャレンジ精神と、差別化に成功した商品力が隠されていました。
本記事では、以下3つのポイントから解説していきます。

『ネジザウルス』がヒットした3つのポイント

  • ネジを「外す」ことに特化した差別化
  • キャッチーで親しみやすいネーミング
  • 消少数意見からヒントを得た潜在ニーズの取り込み

ヒットの理由① ネジを「外す」ことに特化した差別化

家具などを組み立てるとき、解体するときのことを考える人はほとんどいないでしょう。しかし、DIYの流行やローコスト家具の人気上昇に伴い、「組み立てたはいいけど、処分のときネジがうまく外れない」という悩みに直面することは少なくありません。

ネジを締める道具はあっても「外す」道具はない。ここに目をつけたのが本商品の着想でした。

ネジザウルスの最大の特徴はネジを「外すこと」に特化していること。
ふつうのペンチは、開くとギザギザしたヨコの溝が入っていますが、ネジザウルスにはタテの溝が入っています。ネジ頭をつかんで回すとき、ヨコ溝だと回す方向に対して平行となってしまうため滑りやすくなりますが、タテ溝にすることでネジをつかんだとき滑りにくく、外しやすくしています。
さらに、一般的なペンチと比べて先端の傾斜角度を広げることで、ネジ頭をしっかりつかんで回せるようにしています。

ネジザウルスの特徴

 画像:エンジニア公式ホームページより

エンジニアの高崎社長は、入社後約800品目もの商品開発に取り組み、本商品のアイディアをつかんだそうです。
多くの知見をもとに他社が気づいていないニーズを捉え、高い技術力でコンセプトを実現した差別化が、成功要因の1つでしょう。

競合とは視点を変えたコンセプトと高い開発力で、差別化に成功

ヒットの理由② キャッチーで親しみやすいネーミング

ネジザウルスの大ヒットはそのネーミングも大きな要因でしょう。

実は、本商品は発売当時「小ネジプライヤー」という名前でした。
プライヤーというのはペンチのように物を挟んだり切ったりする道具のこと。
”小ネジプレイヤー”は意味的には正しいものの、消費者に馴染みがなく受け入れられませんでした。なんと発売初月の売上はたったの15丁だったそうです。

そこで、ネーミングを社内公募。ネジ頭をガッチリつかむ力強さを恐竜に見立てた「ネジザウルス」に決定しました。するとみるみる売れ行きが伸長したのです。

さらに、アメリカ向けには、より噛みつくイメージの強いヴァンパイヤから「ヴァンプライヤーズ」というネーミングに変更し、持ち手を血の色の赤に変えて販売しています。

アメリカ向けネジザウルス「ヴァンプライヤーズ」

 画像:VAMPIRE 公式サイトより

工具という日常に馴染みがないカテゴリーでは、購入時にどれを選んでよいかわからないという人も多いでしょう。

そんな中、キャッチ―で親しみやすく、機能をイメージしやすい名前にすることで、多くの消費者に受け入れられる結果となったのです。

「キャッチ―で親しみやすい」名前に変えるだけで、商品のイメージや受け入れ性がガラッと変わる

関連記事 心に刺さるキャッチコピーの作り方【すぐに真似できるテクニック18選】

心に刺さるキャッチコピーの作り方【すぐに真似できるテクニック18選】
キャッチコピーを考えたいけどなかなか浮かばない方へ、心に刺さるキャッチコピーの作り方と、すぐに真似できる厳選テクニック18選を紹介します。

ヒットの理由③ 少数意見からヒントを得た潜在ニーズの取り込み

発売から7年経ち、売れ行きに陰りが見えた頃、エンジニアは新たな商品を投入します。
それが現在のヒーローアイテム「ネジザウルスGT」です。

ネジザウルスGT(Amazon外部サイト)

失敗が許されない今、どんな改良を行うか。
そう考えたときヒントを得たのは、ユーザーアンケートの「トラスネジも外せるようにしてほしい」という声でした。

トラスネジというのは一般的なネジよりも頭の部分が低いネジのことで、身の回りのものにもよく使われています。

トラスネジへの要望は、1000件中わずか7件。しかし、「よく使われているだけに、ニーズは決して少なくないはず」と判断し、機能を追加した改良を行いました。
結果として、この要望をもとに改良したことで、更なるネジザウルスのヒットにつながりました。

当時たった7件の意見に注目した理由について、高崎社長は「少数意見にこそ驚きが隠されている」と語っています。

機能やデザイン、味、価格などについて、自分が勝手に想像していたレベルを超えるものに接したとき、われわれは心地よい驚きを感じます。そして、驚きが大きければ大きいほど、満足感も大きい。それは、自分自身も気づいていなかった潜在ニーズが、思いがけず満たされるからではないでしょうか。
とはいえ、いまどきのお客様はそう簡単には驚いてくれません。目も耳も舌も肥えたお客様の期待を上回るのは至難の業で、お客様が何を求めているのかを考えたとき、衆目の見解が一致するようでは、そこに驚きはないと言ってよいでしょう。
その意味で、注目すべきはむしろ少数意見なのです。もっとも、少数意見もほとんどは「多くの人が望んでいないこと」であって、そのあたりを混同せずに選別するプロフェッショナルの眼力が重要です。

※東洋経済オンライン「「ネジザウルス」をヒットに導いた3つの秘訣」より

ユーザーの少数意見からヒントを得て改良した「ネジザウルスGT」は、2009年の発売から7か月間で約7万丁という再ヒットにつながりました。

あえて少数の意見に耳を傾け、潜在ニーズを捉える手法は、現代の多様化するニーズを捉えるマーケティングにおいて、とてもヒントになる言葉ではないでしょうか。

少数意見から潜在ニーズを読み取ることで、消費者の期待を上回ることができる

関連記事 ニーズとは何か|ニーズを正しく把握して応える方法

ニーズとは何か|ニーズを正しく把握して応える方法
ヒットした商品やマーケティングの成功には、「ニーズに応える」ということが必須条件です。今回はそんな「ニーズ」に着目し、ニーズとは何か、ニーズを正しく把握して応える方法について紹介します。

『ネジザウルス』 ヒットの理由まとめ

以上をまとめると、「ネジザウルス」がヒットした理由は以下3点と考えられます。

『ネジザウルス』がヒットした3つのポイント

  • ネジを「外す」ことに特化した差別化
  • キャッチーで親しみやすいネーミング
  • 消少数意見からヒントを得た潜在ニーズの取り込み

マーケティング観点でも参考になるヒントが詰まっていた事例でしたね。
以上、ネジザウルスがなぜヒットしたのか、背景にあるマーケティングについて分析しました。

この機会にヒット商品をチェックしよう!

タイトルとURLをコピーしました