【ヒット商品のマーケティング事例】甘酒市場を復活させた「森永甘酒」の戦略

ヒット商品のマーケティング

ここ数年、甘酒の市場規模が急拡大してきました。インテージによると、11年には39億円にすぎなかった市場が、17年には223億円に達しました。

甘酒市場トレンド【インテージ 飲料SRIデータ 2011年~2019年】

今やブームではなく日常の健康維持食品として定着しつつある「甘酒」。
実はそれを仕掛けたのは、市場最大手の老舗メーカー「森永製菓」でした。

今回は、森永製菓『森永甘酒』が、縮小していた甘酒市場をどのように活性化し再ブレイクを果たしたのか、ヒットの裏側にあるマーケティング戦略を紐解いて、皆様のビジネスのヒントになるトピックをお伝えします。

本記事を書いた人

リコッタ
リコッタ

大学でマーケティングを専攻し、花王や食べログでマーケティングに5年以上従事。多くの新製品や新規事業を立ち上げてきました。

『森永甘酒』が成功した理由

「森永甘酒」は1974年に発売され、以来長い間No.1ブランドとして市場をけん引してきたロングセラー商品です。

森永製菓『森永甘酒』

画像:森永製菓

 

今でこそ「飲む点滴」といわれ、美容や健康のイメージを持つ人が多い甘酒。しかしながらブーム前は冬場やお祭りなど飲用シーンが限られ、またユーザー層の固定化もあり、甘酒市場は停滞していました。

森永甘酒がそんな甘酒市場をいかに活性化し、売上を伸ばすことができたのか。
その背景には以下3つのポイントがありました。

『森永甘酒』がヒットした3つのポイント

  • 「温故知新」から新たな使用シーンの提案
  • 隠れた価値を発掘した市場分析
  • ブームを戦略的に仕掛けたカテゴリー提案

ヒットの理由① 「温故知新」から新たな使用シーンの提案

冬のイメージが強い甘酒ですが、実は俳句では夏の季語であり、もともと夏に飲まれていた飲料でした。

こうじ甘酒は、アミノ酸やブドウ糖などが含まれ栄養価が高いので、暑い夏を生き抜くための貴重な飲料だったのでしょう。

そこに着目して2011年より行ったのが、「冷やし甘酒」をフックにした新たな使用シーンの提案でした。

「冷やし甘酒」は2000年より地域限定で発売していた商品ですが、「夏バテ対策に甘酒」という訴求で、今までに行ってこなかった夏のキャンペーンを展開したのです。

これが、すっきりした飲み心地と、夏に失いがちな栄養素を補給できるという点から大ヒット。2011年には東日本限定で販売していたにも関わらず、2009年に比べて200倍の売上を記録しました。

まさに温故知新。すでに持っている商品ラインナップとブランド資産を活かし、コストを抑えて新たな使用を喚起した本施策は、「売り方を変える」ことで成功した好事例です。

ヒットの理由② 隠れた価値を発掘した市場分析

2つ目は、既存の商品に新たな価値を見出した市場分析力が挙げられます。

甘酒ブームの前、時代は「塩麹」ブームでした。テレビ番組などで、塩麴を使った料理や、効果効能が多く取り上げられ、話題になっていました。健康志向の高まりも相まって、発酵食品が注目されていたのです。

そんな世の中の潮流や冷やし甘酒の成功を踏まえ、森永は消費者ニーズやトレンドを読み解き、自社の魅力を最大限生かすポジションを見出しました。

それが「麹を使った新たな健康食品」という提案です。
古くからある甘酒に、新しい価値を発掘したのです。

消費者ニーズや自社、競合の状況を分析することを「市場分析」といい、市場分析で最も一般的に用いられるフレームワークを「3C分析」といいます。
甘酒の市場分析を3C分析で整理すると、森永甘酒の提案の整合性がよくわかります。

甘酒市場 3C分析(2010年頃)

 

多くの課題を抱える一方で、世の中を冷静に読み解くことで隠された価値を見つけ、新たなポジショニングを獲得することに成功したのです。

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ヒットの理由③ ブームを戦略的に仕掛けたカテゴリー提案

「麹を使った新たな健康食品」という提案を、新たなブームとして世の中事化できたことが、甘酒市場がここまで拡大した大きな要因でしょう。

その背景には、森永の緻密な仕掛けがありました。

1つは、大学との共同研究を行い、目の下のクマを抑えたり皮脂分泌を抑えるなど、甘酒の効果効能を担保する情報開発を行ったことです。

もう1つは流行るキーワードを開発したことです。効果効能をわかりやすく発信するのため、「飲む点滴」「江戸時代からの天然サプリメント」といったキーワード開発を行い、消費者の興味に沿ったカテゴリー提案を行いました。

ここで着目すべきは、「森永甘酒」ではなく、「甘酒」というカテゴリーを訴求したことです。

企業発信ではないことで、メディアが「塩麹の次に甘酒がブームになりそう」と取り上げやすくなり、世の中事化していきました。

シェアNo.1の森永にとって、市場活性化は売上拡大の大きな後押しとなります。
甘酒というカテゴリー全体が世の中で広まることで、自社の売上も上がる仕掛けを施したのです。

『森永甘酒』が成功した理由まとめ

以上をまとめると、森永甘酒が成功した理由は以下3点と考えられます。

『森永甘酒』がヒットした3つのポイント

  • 「温故知新」から新たな使用シーンの提案
  • 隠れた価値を発掘した市場分析
  • ブームを戦略的に仕掛けたカテゴリー提案

既に持っている資産を活かし、売り方や提案を変えることで成功した森永甘酒の事例は、他の商品やサービスでも学べるポイントが多いのではないでしょうか。

以上、『森永甘酒』ヒットの背景にあるマーケティング戦略について分析しました。

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