【ヒット商品のマーケティング分析】鬼滅の刃はなぜ売れたのか

ヒット商品のマーケティング

「全集中!」

皆さんも一度は聞いたことがあるのではないでしょうか。子どもから中高年まで、空前の大ヒットとなったアニメ『鬼滅(きめつ)の刃』の作中のセリフです。

鬼滅の刃は、『週刊少年ジャンプ』で2016年から2020年5月まで連載されていた吾峠呼世晴さん作の少年マンガです。
家族を「鬼」に惨殺されて妹が鬼となってしまった主人公の「炭次郎」が、妹を人間に戻すために仲間とともに成長しながら鬼を倒すストーリーとなっています。

アニメ「鬼滅の刃」公式サイト
TVアニメ「鬼滅の刃」Blu-ray&DVDシリーズ発売中。劇場版「鬼滅の刃」無限列車篇 2020年10月16日(金)公開

2019年4月にアニメ化されてから売上を伸ばし、2020年の映画「劇場版 鬼滅の刃 無限列車編」が公開。2021年5月中旬時点で前人未踏の400億突破が目前に迫っています。

本記事では、「鬼滅の刃」がなぜここまで人気となったのか、ヒットの背景にあるマーケティング戦略を解明し、皆様のお仕事に役立つトピックをお伝えできればと思います。

本記事を書いた人

リコッタ
リコッタ

大学でマーケティングを専攻し、花王や食べログでマーケティングに5年以上従事。多くの新製品や新規事業を立ち上げてきました。

『鬼滅の刃』がヒットした理由

鬼滅の刃の歴史的ヒットを前に、「確かに面白いけどなんでこんなに売れたんだろう」と考えたことはないでしょうか。

キャラクターの魅力や、コロナ禍でアニメを見る機会が増えたことも事実ですが、実はマーケティング的に巧みな仕掛けがありました。

鬼滅の刃が大ヒットした3つのポイント

  • 『少年漫画×共感性』という新しいポジショニング
  • アニメ化とチャネル拡大による幅広いターゲット層の獲得
  • 周辺コンテンツによる波及効果

ヒットの理由① 『少年漫画×共感性』という新しいポジショニング

「鬼滅の刃」ならではの特徴として、「主人公や登場人物の優しさ」が挙げられます。

主人公「炭次郎」がとにかく優しく、家族想い、友達想い、仲間想いな人物像です。時には敵にすらも寄り添ってしまいます。また、周辺の仲間たちも心に深いやさしさを持っています。

敵である鬼の心理描写が多いことも特徴です。愛する人を失った悲しみと自分への怒り、家族愛への渇望など様々な理由があったことが丁寧に描写されています。

ストーリーとしては主人公が成長しながら敵を倒していくというわかりやすい少年漫画の筋書きですが、主人公や鬼一人一人の心理描写や背景描写が丁寧なことで、幅広い世代が自分の心を寄せて共感できる内容となっています。

この「少年漫画×共感性」というポジショニングが、今までにない差別化ポイントとなったのでしょう。また、コロナ禍による疲弊感や、令和の「人を傷つけない」という価値観にもマッチしていたことで、より深く受け入れられたのではないでしょうか。

ヒットの理由② アニメ化とチャネル拡大による幅広いターゲット層の獲得

「鬼滅の刃」大ヒットの一翼を担ったのが2019年のTVアニメ化です。漫画連載中に深夜帯で放送がスタートしました。

アニメのクオリティの高さはよく着目されますが、動画配信のチャネル拡大に思い切った戦略があります。アニメ放映後すぐに、NetflixやAmazonプライムビデオといった動画配信サービスに展開していきました。

配信チャネルを拡大することで、深夜帯での視聴層である20代~30代の青年層だけでなく、女性やファミリー層まで視聴ターゲットを拡大することができます。

もちろんリスクもあったと思いますが、「少年漫画×共感性」というコンテンツ力に期待し、思い切ったチャネル拡大を行ったことが幅広い年齢層にリーチするプロモーションにつながりました。

ちなみに、世間への普及率は「16%」を超えるのが難しいといわれています(「キャズム」ともいいます)。これは、新しいものを受け入れるのに抵抗がある人が世の中の大半を占めるためです。逆にここの壁を超えると一気に普及率が伸びていきます。

Amazonプライムビデオなどの動画配信サービスにより、初回視聴のハードルを大きく下げることができたことも、少年漫画をここまで世間に普及させる大きな要因と考えられるでしょう。

ヒットの理由③ 周辺コンテンツによる波及効果

「鬼滅の刃」と聞くと、頭にLISAさんの曲が流れる人も多いのではないでしょうか。

鬼滅の刃はアニメや漫画だけでなく、曲や声優陣などの周辺コンテンツも注目されました。

このように、アニメを見なくても鬼滅の刃を思い出すシーンが多くあったことが鬼滅の刃の特徴の1つです。これは「波及効果」といわれます。

アニメや漫画のコンテンツ自体だけでなく、曲や声優陣などからも「鬼滅の刃」という文脈で自然に情報が拡散していく座組ができていたのです。

ちなみに、アニメ会社のアニプレックスと、主題歌を歌うLISAさんは同じくソニー系列所属です。過去の取り組みもあり、原作・アニメ・曲と一貫してこだわり抜いて制作する土壌があったことも成功要因でしょう。

マーケティング用語でいうと、マーケティングミックス(4P)の「製品(Product)」のうち、製品自体の価値だけでなく、付随価値といわれる周辺の価値にまでこだわり抜いたことで、日常の中で鬼滅の刃を想起するシーンを増やすことができたことは、マーケティング的に緻密な戦略といえます。

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『鬼滅の刃』ヒットの理由 まとめ

まとめると、鬼滅の刃のヒットの理由は以下3点と考えられます。

鬼滅の刃が大ヒットした3つのポイント

  • 『少年漫画×共感性』という新しいポジショニング
  • アニメ化とチャネル拡大による幅広いターゲット層の獲得
  • 周辺コンテンツによる波及効果

鬼滅の刃を見たことがある人もない人も、こんな視点で鬼滅の刃を見てみると更に楽しめるのではないでしょうか。

以上、「鬼滅の刃」がなぜここまで売れたのか、ヒットの背景にあるマーケティング戦略の分析でした。

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