【ヒット商品のマーケティング事例】伊右衛門の改良がヒットした理由

ヒット商品のマーケティング

皆さんはサントリーの緑茶飲料『伊右衛門』が昨年2020年、大型リニューアルをしたのを知っていますか?

伊右衛門の変化

・before(2019年2月~)

・after(2020年3月~)

 

サントリーが発売する緑茶飲料「伊右衛門」は2020年4月、発売以来最大のリニューアルをおこないました。その結果、リニューアル後の4月-12月の販売実績において対前年3割増と大幅な伸長を記録し、2020年の緑茶売上で伊藤園の牙城を崩し、シェアNO.1※となりました。

サントリー プレスリリース(2021/3/24)より
(インテージSCI 無糖茶飲料市場 2020年1月~12月金額シェア)

本記事では、「伊右衛門」の大型リニューアルがなぜここまで成功したのか、ヒットの背景にあるマーケティング戦略を解明し、皆様のお仕事に役立つトピックをお伝えできればと思います。

本記事を書いた人

リコッタ
リコッタ

大学でマーケティングを専攻し、花王や食べログでマーケティングに5年以上従事。多くの新製品や新規事業を立ち上げてきました。




伊右衛門の改良がヒットした理由

伊右衛門が大型リニューアルを成功した背景には、マーケティング視点で見ると思わず「なるほど」と言いたくなる3つの理由がありました。

 『伊右衛門』の改良がヒットした3つのポイント

  • 消費者インサイトを突いた『見た目』による差別化
  • 『緑色』一点突破の マーケティングミックス(4P)戦略
  • 『ラベルレス』によるブランド価値の向上

ヒットの理由① 消費者インサイトを突いた『見た目』による差別化

マーケティングにおいて最も重要なことは、「顧客のニーズを捉えること」です。

皆さんは緑茶にどんなニーズを持っているでしょうか?

関連記事 ニーズとは何か|ニーズを正しく把握して応える方法

ニーズとは何か|ニーズを正しく把握して応える方法
ヒットした商品やマーケティングの成功には、「ニーズに応える」ということが必須条件です。今回はそんな「ニーズ」に着目し、ニーズとは何か、ニーズを正しく把握して応える方法について紹介します。

2011年のデータになりますが、「あなたがペットボトル入りの「お茶飲料(日本茶・緑茶、ブレンド茶、中国茶)」を選ぶ時に重視する点はなんですか。」というアンケートの結果があります。

あなたがペットボトル入りの「お茶飲料(日本茶・緑茶、ブレンド茶、中国茶)」を選ぶ時に重視する点はなんですか。 【複数回答形式】

月に1回以上、ペットボトル入りのお茶飲料を自分で購入する全国の15~59歳の男女1000名対象

「味」が93%と最も多く、次いで「価格」「容量」となっています。

伊右衛門リニューアル前、緑茶メーカー各社が「味」の訴求が多かったのは、こういった消費者ニーズが背景にあるからなのです。

さて、伊右衛門に話を戻します。伊右衛門がリニューアル時に最も訴求したことはなんでしょう。

それは、「淹れたてのような緑色」です。

「色」や「新鮮さ」といったニーズは先ほどの消費者アンケートの緑茶選択理由に実は入っていません。にもかかわらず、「淹れたてのような緑色」という訴求に、消費者の心は掴まれたのです。

これを「消費者インサイト」といいます。消費者も気づいていない、または気づこうとしていない「心の中の真実」のことです。消費者インサイトを衝くことで、消費者は自社ブランドのベネフィットを理解したり、買いたくなるようになります。

関連記事 インサイトとは?その意味と隠された消費者インサイトを見つける3つの方法

インサイトとは?その意味と隠された消費者インサイトを見つける3つの方法
「インサイト」を衝くことで、消費者の認識や感情を大きく動かすことができます。そんな「インサイト」の意味と活用事例、隠されたインサイトを見つける3つの方法を解説します。

緑茶飲料は「味の良さ」はもはや当たり前の品質となっていた中で、伊右衛門は「淹れたての緑色」という新たな価値を提供し、消費者インサイトを捉えました。消費者も気づいていないインサイトを見つけることは簡単ではありません。消費者の声を聞き、チームで考え抜いて発見したサントリーの企業努力はすごいと思います。

その結果、消費者インサイトを捉えただけでなく、競合と圧倒的に差別化できる「ポジショニング」を獲得しました。まさに競合と「土俵を変える」ことに成功したのです。

関連記事 ポジショニングって何?知っておくべき意味と成功のポイント

ポジショニングって何?知っておくべき意味と成功のポイント
ポジショニングとは、「競合に勝てる土俵を探すこと」です。本記事ではポジショニングとは何か、競合に勝てるポジショニングの探し方を、企業事例を用いながらわかりやすく解説します。

ヒットの理由② 『緑色』一点突破のマーケティングミックス(4P)戦略

消費者ニーズを捉え、競合と差別化するコンセプトを作っただけでは、商品は売れません。
戦略は「机上の空論」になることが多いからです。

例えばよくある話で、「今年こそ5キロ痩せよう!」と思っても、何もしないうちに半年が経った・・・とかはよくある話ですよね。
ダイエットをするには、「間食はやめよう」「毎週ジムで筋トレしよう」など、具体的なアクションを伴わないと、結果はついてきません。

マーケティング戦略において、考えたマーケティング戦略(What)をどうやって実行するか(How)を考えることを「マーケティングミックス(4P)」といいます。

以下4つの観点から、戦略の「How」を考えていくのです。

マーケティングミックス(4P)の4つの観点

  • Product:製品
  • Price:価格
  • Place:流通
  • Promotion:広告宣伝」

関連記事 マーケティングミックス(4P)とは?実際に活用する方法【保存版】

マーケティングミックス(4P)とは?実際に活用する方法【保存版】
マーケティングミックスとは、顧客にどうやって買ってもらうかを4つの観点で考えることです。実際にマーケティングミックスを使うコツや、活用事例について詳しく解説していきます。

伊右衛門は、消費者インサイトを衝く「淹れたての緑色」を成功させるために、一貫したマーケティングミックスを徹底しています。

 『伊右衛門』マーケティングミックス

 ※サントリー商品訴求を基に筆者が作成

2004年の発売当時から「本格感」を訴求してきた伊右衛門にとって、「緑色」一点突破にする戦術をとることはかなり難しい決断だったことが想像できます。
マーケティングミックスが消費者インサイトとぴったりと合致した場合、こんなにも爆発力があるのだと気づかされる事例です。

ヒットの理由③『ラベルレス』によるブランド価値の向上

2020年3月に改良した直後の4月、サントリーは通常のフィルムラベルを外した「ラベルレス」の商品を数量限定で発売しました。

伊右衛門ラベルレス(首掛式ラベル付)

このラベルレスボトルは、「淹れたての緑色」というブランドイメージを強固にするだけでなく、環境にやさしく、分別の手間がかからないことで様式の変化による家庭内消費の拡大に対応しました。

2021年には「日本パッケージデザイン大賞」を受賞しています。

訴求ポイントの象徴となり、かつ環境にもやさしく分別しやすいラベルレスボトルは、消費者の心の中の「ブランド価値」向上に大きく貢献したフラッグシップ商品といえるでしょう。

ヒットの理由まとめ

まとめると、伊右衛門の大改良がヒットした理由は以下3点と考えられます。

 『伊右衛門』の改良がヒットした3つのポイント

  • 消費者インサイトを突いた『見た目』による差別化
  • 『緑色』一点突破の マーケティングミックス(4P)戦略
  • 『ラベルレス』によるブランド価値の向上

「味」から一歩先を行く価値を提供したサントリー。それを追う競合の動きにも注目ですね。

以上、伊右衛門リニューアル成功の理由について解説しました。




タイトルとURLをコピーしました