【企業研究のタネ】アイデアで大逆転!老舗絵具店が生んだ『胡粉ネイル』ヒットの理由

ヒット商品のマーケティング

ホタテの貝殻からつくられる、日本の伝統的な天然顔料「胡粉(ごふん)」。

日本画などの絵の具として用いられてきたこの胡粉を活用した「胡粉ネイル」というマニキュアをヒットさせたのが、京都にある日本最古の絵の具メーカー「上羽絵惣」です。

上羽絵惣「胡粉ネイル」

画像:上羽絵惣 プレスリリース

同社は日本画文化に大きく貢献してきましたが、西洋絵の具が輸入されるようになってからは低迷が続いていました。

そんな中、2010年1月に同社初の化粧品となる「胡粉ネイル」を発売。

発売すると徐々に人気に火がつき、現在では年間40万本を売るヒット商品となりました。胡粉ネイルをきっかけに、経営難から起死回生を果たしたのです。

本記事では、なぜ京都の老舗メーカーが胡粉ネイルをヒットさせることができたのか、その理由をマーケティング観点から分析し、皆様のアイデアのヒントになるトピックスをお伝えします。

本記事を書いた人

リコッタ
リコッタ

大学でマーケティングを専攻し、花王や食べログでマーケティングに5年以上従事。多くの新製品や新規事業を立ち上げてきました。

『胡粉ネイル』がヒットした理由

胡粉ネイルがヒットしたのは、長い歴史で培った知見を活かし、現代のビジネスチャンスを掴んだことにありました。

本記事では、以下3つのポイントから解説しています。

『胡粉ネイル』が成功した3つのポイント

  • 危機脱出!新たなチャンスを掴んだ化粧品事業への参入/strong>
  • 絵の具を転用して新たなニーズを獲得
  • ターゲットを狙って成功!販売チャネル戦略

ヒットの理由① 危機脱出!新たなチャンスを掴んだ化粧品事業への参入

胡粉ネイルを生んだ上羽絵惣の創業は1751年。

元々は胡粉製造業としてスタートし、その後、岩絵の具など日本画用の顔料の製造も手掛け始めた、現存する日本最古の絵の具メーカーです。

日本画文化の興隆に大きな役割を果たしてきた同社ですが、時代の流れと共に日本画人口はわずかまでに減少。

文化財の修復という社会的責任もある中、同社は「日本画という枠に捉われず、もっと広い世界にも好機があるのでは」と、新たなチャンスを模索していきます。

そして転機はやってきました。たまたま聞いていたラジオで「ホタテ塗料でマニキュアをつくった女子高生」のニュースを聞き、胡粉の新たな使い道を思いついたのです。

早速OEMメーカーに当たり商品開発をスタートしました。同社が長年培ってきた色や胡粉の知見を活かし、2010年1月ついに胡粉ネイルを完成させました。

その結果、当初つくった6000本は3カ月で完売。同年3月に9色を投入するとさらに人気に火がつきたちまち話題となりました。

老舗であればあるほど、新しいことへのチャレンジに対して腰が重くなるもの。

日本最古の絵の具メーカーでありながら、自社の知見を活かせるビジネスチャンスを掴んだチャレンジ精神が、胡粉ネイルのヒットを呼び込んだのでしょう。

従来のカテゴリーだけでなく、技術や知見を他のカテゴリーに活かせないか模索することも大切

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ヒットの理由② 絵の具を転用して新たなニーズを獲得

胡粉ネイルは、従来のマニキュアと大きく異なる特徴から人気を集めています。

それは「マニキュアを落とすときに除光液が要らない」ということです。

「胡粉ネイル」は、天然素材であるホタテ貝の貝殻からつくられる胡粉を使用しており、シンナー系有機溶剤は使用していません。

そのため、アセトン系の除光液でなく、手指を消毒するアルコールで簡単に落とすことができます。

また、天然原料で作られているため、通常のマニキュアのような匂いもなく、今までマニキュアが合わなかった人や妊婦さんなども安心して使えると話題になりました。

さらに、日本の伝統色を守り続けてきた同社だからこその日本らしい色味と発色が新しいと、多くの女性の心をつかんでいます。

日本画絵の具からマニキュアを作るという「絵の具店ならではの発想」が、今までのマニキュアにはない新たなニーズを獲得したのです。

従来のカテゴリーで捉えきれていないニーズはないか、それを自社で実現できないか考えてみる

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ヒットの理由③ ターゲットを狙って成功!販売チャネル戦略

どんなにいい商品を作っても、ユーザーに商品が届かないと意味がありません。

胡粉ネイルではその「販売チャネル戦略」においても、的確にターゲットを狙い成功を収めています。

当初はホテルのお土産コーナーやECを中心に販売していましたが、中川政七商店やハウスオブローゼなどのセレクトショップに出店。「使うものにこだわりたい」という女性が来店するチャネルを中心に配荷しています。

さらに全国の病院や薬局でも販売。
病気の治療で中々おしゃれを楽しめない女性の患者さんも、爪を傷めない『胡粉ネイル』ならばそれが可能ということもあり、多くのニーズを集めています。

海外観光客にもウケると考え、2014年には沖縄に出店。海外向けECサイトも立ち上げ、新たな需要を取り込んでいます。

「胡粉ネイルを本当に欲しい人は誰か」という視点を忘れず、狙いに沿った販売戦略をとったことが、年間40万本という売上につながっています。

「この商品が本当に欲しい人」が来店するチャネルに絞って配荷することで、コストを抑え大きな成果を得る

『胡粉ネイル』ヒットの理由 まとめ

以上をまとめると、胡粉ネイルが売れた理由は以下3点と考えられます。

『胡粉ネイル』が成功した3つのポイント

  • 危機脱出!新たなチャンスを掴んだ化粧品事業への参入/strong>
  • 絵の具を転用して新たなニーズを獲得
  • ターゲットを狙って成功!販売チャネル戦略

老舗メーカーがアイデアで起死回生に成功した本事例からは、日本にはまだまだビジネスチャンスがあるということがよくわかりましたね。

他にもヒット商品の裏側なども解説していますので、ぜひアイデアの参考にしてみて下さい。

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