【ヒット商品のマーケティング分析】高級トースター「ビストロ」が前年の2倍売れている理由

ヒット商品のマーケティング

2015年に突如形成された「高級トースター」という新たな市場。その先駆者となった「BALMUDA The Toaster」の牙城を崩す商品が、今年新たに登場したのを知っていますか?

今回解説するパナソニックの「ビストロ NT-D700」です。

パナソニック「ビストロ NT-D700」(以下「ビストロ」)は2021年2月に発売され、前モデルの2倍ペースを超える大ヒットを記録。『日経トレンディ』で「2021年上期ヒット大賞家電部門」にも選ばれ、品薄状態が続いています。

本記事では、なぜ「ビストロ」がここまで売れたのか、ヒットの背景にあるマーケティング戦略を解明し、皆様の仕事に役立つトピックをお伝えしていきます。

本記事を書いた人

リコッタ
リコッタ

大学でマーケティングを専攻し、花王や食べログでマーケティングに5年以上従事。多くの新製品や新規事業を立ち上げてきました。

高級トースター「ビストロ」が売れた理由

高級トースター「ビストロ」がここまで売れている背景には、パナソニックならではの緻密なマーケティング戦略がありました。
本記事では大きく3つのポイントにまとめて分析していきます。

 高級トースター「ビストロ」がヒットした3つのポイント

  • 「後発新製品」のメリットを活かした商品開発
  • 他企業コラボによるブランディング
  • バルミューダと「比較検討」させるプロモーション戦略

ヒットの理由① 「後発新製品」のメリットを活かした商品開発

前提知識として、新製品には以下の3種類のタイプがあります。

  • 製品革新型…新たな製品市場を作り出す新製品(例:スマートフォンなど)
  • 技術革新型…既存の製品市場における技術的な新製品(例:ハイブリッド車など)
  • 改良型…自社や他社が出した新製品に追随・模倣して出す新製品(例:モデルチェンジなど)

参考:高橋克義・桑原秀史『現代マーケティング論』(2008)

一見すると「革新型」の方が優れているように思えますが、後発である「改良型」の方がメリットを享受できる場合もあります。ビストロはまさにこの「改良型」としての成功事例といえるでしょう。

ビストロが参画した「高級トースター」の市場が形成された当時は、いわばバルミューダの独壇場でした。洗練されたデザインと、機能を絞ったことによる付加価値の高さ・わかりやすさで市場を形成しました。

一方、スチームを使うため水を投入する必要があり、「手入れが大変」だったり、機能を絞ったことにより「他の用途に使いづらい」といった利用者の声もありました。

そこで後発ならではの「かゆいところに手が届く」商品開発を行って発売したのが「ビストロ」です。

ビストロは遠赤外線と近赤外線の2種類のヒーターを使うことにより水の投入を不要としながら、冷凍パンまでうまく焼けるという付加価値を追加しました。
さらに、洗練されたシンプルなデザインの中に、焼き芋などトースト以外の用途も追加しました。

後発新製品であることのメリットを活かし、バルミューダの良さを踏襲しながら、バルミューダの不満点を解消することに成功したのです。

後発となる「改良型」の新製品の場合、先発企業に比べてインパクトが薄れてしまい差別化しにくいといったデメリットがありますが、一方でユーザーの声や訴求方法などが学習できる、リスクが抑えられる、といったメリットがあります。

パナソニックは松下電器時代「マネシタ電気」と揶揄されるほど、先行する企業が開発した技術を踏襲して後追いで分析・開発して発売する手法で成長してきました。

パナソニックならではの分析力・開発力を活かし、先発新製品から得られた知見を上手く汲み取った製品開発を行えたことが、ビストロ成功の要因の1つでしょう。


ヒットの理由② 他企業コラボによるブランディング

ビストロは27,500円(税込)と、バルミューダのトースターより高価な価格設定を行っています。消費者からの「パフォーマンスへの信頼」を得られないとなかなか買ってもらえないでしょう。

「パナソニック」という企業ブランドも信頼醸成の強みですが、商品ブランドを信頼させる方法として他企業とのコラボレーションという策を取りました。

コラボ相手に選ばれたのが、高級食パンの有名店である「乃が美」です。「乃が美推奨」というキャッチコピーをプロモーションや店頭などでもアピールしています。

ビストロ公式サイト キービジュアル

※パナソニック ビストロホームページより引用
– パナソニック ビストロHP https://panasonic.jp/toaster/products/NT-D700.html

 

乃が美といえば、高級食パン市場のトップブランドです。「乃が美推奨」というキャッチコピーが後ろ盾にあることで、「あの乃が美が推薦するんだから美味しいのだろう」という気持ちになります。

これは心理学における「権威効果」という心理的な効果です。影響力のあるブランドや専門家などのお墨付きがあることで、信頼感につながるのです。

価格が高い商品だからこそ、関連するブランドによる推奨という信頼感を形成し、かつ「乃が美」ユーザーからの流入も獲得できるという素晴らしいブランディング策です。

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ヒットの理由③ バルミューダと「比較検討」させるプロモーション戦略

ビストロは実はCMを投入していません。

なぜCMを打たなくてもここまで売れたかという問いに、家電ならではの購入行動が挙げられます。それは、買う前の「比較検討」が他カテゴリーよりも顕著に行われるということです。

 消費行動モデル「AISAS」

商品を知ってから購入するまでの流れを示した「AISAS」というモデルがあります(上図参照)。購入までのステップを5段階に分け、その頭文字を取っています。

家電の場合、単価が高く長期間使用することから、購買前の「Search」の段階で、WEBやSNS、店頭で各社の製品を比較検討するという特性があります。

ビストロはシンプルで洗練されたデザインとすることで、直感的にバルミューダの比較製品とわかる見た目にしました。さらにSNSを中心とした情報発信や、全国での広い販売チャネルを活かした商品訴求を展開しました。

商品やプロモーションを通じて、バルミューダと比較検討するときに必ず選択肢に入るような仕掛けを緻密に行ったのです。

家電ならではの購買行動を踏まえたプロモーション戦略が、CMを打たなかったにも関わらずここまで売れた要因の1つでしょう。

まとめ

まとめると、パナソニック高級トースター「ビストロ」のヒットの理由は以下3点と考えられます。

 高級トースター「ビストロ」がヒットした3つのポイント

  • 「後発新製品」のメリットを活かした商品開発
  • 他企業コラボによるブランディング
  • バルミューダと「比較検討」させるプロモーション戦略

今後の売れ行きや、他社の動向にも注目すると面白そうですね。

以上、「ビストロ」がなぜここまで売れたのか、ヒットの背景にあるマーケティング戦略の分析でした。

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