【ヒットの兆し】なぜ「微アル」?微アルコール市場が広がるマーケティング的理由

ヒット商品のマーケティング
画像:アサヒ「ビアリー」ホームページより

近年はアルコール度数0.00%のノンアルコールビールの人気が高まり、市場規模は拡大を続けてきました。

ノンアルコール市場でヒット商品が続々登場する今、2021年3月アサヒビールは0.5%の“微”アルコールビール「ビアリー」を発売。ビール市場に突如「微アルコール(微アル)」というカテゴリーが立ち上がりました。

アサヒ「ビアリー」

さらに同年9月にはサッポロビールも微アル市場に参入。アルコール度数0.7%の「サッポロ The DRAFTY(ザ・ドラフティ)」を発売しました。

サッポロ「The DRAFTY(ザ・ドラフティ)」

さらに、アサヒはビアリーに続いて同社初の微アルハイボール「アサヒ ハイボリー」を上市。
まだまだ小さい微アル市場ですが、好調な滑り出しでヒットの兆しを見せています。

本記事では、なぜノンアルコール市場がある中、わざわざ微アル市場に各社参入しているのか、その理由をマーケティング観点から3つの視点で分析していきます。

本記事を書いた人

リコッタ
リコッタ

大学でマーケティングを専攻し、花王や食べログでマーケティングに5年以上従事。多くの新製品や新規事業を立ち上げてきました。

微アルコール市場が広がる3つの理由

理由① 「酔うため」でなく「飲むため」という層が一定層いる

お酒を飲まない人には信じられないかもしれませんが、愛飲者の中には「酔いたいから」ではなく、「飲みたいから」という理由でビールを購入する人が一定数存在します。筆者もその一人です。

こういう層はお酒に強く、あまり酔いません。「酔わないなら別に飲まなくていいでしょ」と思われるかもしれませんが、単純にビールの味が好きであったり、仕事終わりにリラックスするなどのために「飲む」という行動自体を楽しんでいます。

一方で、お酒を飲むのが好きな層にも健康志向は広がっています。

少し前に流行った「ストロング系」は“コストバイアルコール”から人気を集めましたが、そのアルコール量から健康への影響が危惧され、市場は徐々に縮小していきました。

参考記事 HUFFPOST「オリオンビール、ストロング系チューハイから撤退」

オリオンビール、ストロング系チューハイから撤退。「外出自粛が進む中、消費者の健康に繋がれば」
チューハイ「WATTA」シリーズの売上げの約4割を占めていた「WATTA STRONG」。健康志向へのシフトを進める中で1月に生産終了した。

「ビールを飲みたい、でも健康は気にしている」というニーズに、微アルは応えています。

例えば、アサヒの「ビアリー」は、一度ビールとして完成させたものをわざわざ蒸留し、アルコール濃度を低くして作られています。

アルコール度数をあえて少し残すことで、「アルコール度数は低いのに5%と同じような味わい」を達成し、酔いたいというよりは「飲みたい」という人の健康志向に応えているのです。

あえて少しばかりのアルコールを残す意味

あえて0.5%残すことに意味はあるのか、だったらノンアルコールでよいのではないか…

そんな疑問も感じたとき、ふとキリンのグリーンラベルを思い出しました。

グリーンラベルは、競合他社が「糖質フリー」を謳う中「糖質70%オフ」として発売し、あえて“30%残す”ことでの味わいで差別化し、大ヒットしました。

また、発泡酒や第三のビールブランドがしのぎを削って味の改良を繰り返す中でも、どこか「やっぱりビールが一番美味しい」という消費者心理が心のどこかにあるように思います。

あえて0.5%のアルコールを残してビールとして発売することには、「ビールを飲みたい、でも健康は気にしている」というニーズに応えたことが背景にあるのでしょう。

酔うことだけがアルコール飲料の目的でなくなってきていることが伺えます。

理由② 「アルコール量表示」に伴うビール会社の戦略

どんどん進行する「アルコール離れ」への危機

現在アルコール飲料には“アルコール5%”というようにアルコール度数が必ず記載されていますが、近い将来アルコールのグラム表記も追加されます。

これは政府が推進するアルコール健康障害対策基本法によるもので、アサヒグループは年内からホームページで、キリンホールディングスは2024年までに缶での表示を開始すると発表しています。

厚生労働省は生活習慣病のリスクが高まる飲酒量として男性で1日あたり40グラム、女性は20グラムとの数値を示しています。

お酒をよく飲む人は、自分が飲んだ杯数はわかってもアルコール量は把握していないでしょう。
しかし飲んだアルコール量を消費者が把握できるようになると、「今日はもう40グラム飲んじゃったからやめとこう」とコントロールでき、アルコールの節約につながると考えられています。カロリーを記録するとダイエットにつながるといわれるのと同じです。

さて、こうなると困るのはビール会社です。若者のビール離れも取りざたされる中、さらなるアルコール離れはビール会社にとって痛手となります。

そこで、ビール会社は様々な選択肢を増やすことで、アルコールを楽しむシーンを増やしたいと考えています。微アルもその一つです。

ほんのちょっとアルコールが入っていることで、今までは飲んでいなかった休日のランチタイムにも楽しめたり、次の日に残したくないときも飲めたりするかもしれません。

ノンアルコールでは達成できないシーンを幅広く提供し、アルコールが選ばれる選択肢を広げているのです。

価格設定に隠された狙い

また、価格帯からも狙いが見受けられます。

例えば、ビアリーはアルコール度数0.5%ながら、ビールと同価格帯を設定しています。

これは、ビールを普段購入する人の追加購入を狙っていること、そして微アルからビールへのスイッチを期待していることが伺えます。

微アル発売の背景には、未来に起きうるアルコール離れに先回りし、微アルという新市場でアルコール飲料が選ばれる選択肢を増やし、さらにはビール返りも期待しているという狙いがあると思われます。

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理由③ お酒が弱い人もビールを飲める選択肢を提供

サントリーによると、日本人の約40%はお酒に弱い体質といわれています。

筆者の仲のいいお酒の弱い友人は、サントリーのほろよいを飲みながら「3%でも全然ダメ」と顔を真っ赤にして言います。

ノンアルコール飲料によってお酒が弱い人の選択肢は広がったものの、「アルコールが飲める友人と一緒に酔いたい」というニーズは少なからずあるでしょう。

ビールを飲もうと思った時、度数約5%の通常のビールか、ノンアルコールかの二択でした。その二つの間に新しい選択肢をつくった微アルは、お酒が弱い人も強い人も一緒にビールを楽しめる幅を広げたのです。

また、アサヒビールが実施したアンケート調査によると、近年「あえて飲まない」という若者が増加しています。さらに、飲み会やお酒の飲み方に不満・不自由さを感じている人も約半数もいるとのことです。

微アルを発売した各社の思いは、多様性が広がるニーズに応えることで、アルコールを少しでも多くの人に楽しんでほしいというものでしょう。

アサヒの微アル市場開拓からは、「飲めない人も飲まない人も多いし、アルコール離れの流れあるし…でもアルコール諦めないぞ!」という気概というか気合を感じます。

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微アルコール市場が広がる理由 まとめ

以上をまとめると、微アルが以下3点と考えられます。

微アルコール市場が広がる3つの理由

  • 「酔うため」でなく「飲むため」という層が一定層いる
  • 「アルコール量表示」に伴うビール会社の戦略
  • お酒が弱い人もビールを飲める選択肢を提供

「なぜわざわざ微アルなの?」と思っていましたが、分析してみると納得できる理由がありました。
まだまだ規模としては小さい微アル市場が、今後拡大していくのか注目したいですね。

他にもヒット商品の裏側なども解説していますので、ぜひアイデアの参考にしてみて下さい。

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