アサヒビールにマクドナルド…ロングセラー商品の「復刻版」に隠された企業の狙い

マーケティング実践
画像:アサヒ生ビール ホームページより

外食産業や食品大手メーカーなどを中心に、知名度の高いロングセラー商品で「復刻版」を投入する動きが広がっています。

2021年7月に日本上陸から50周年を迎えるマクドナルドでは、記念キャンペーンとしてテキサスバーガーなど過去人気を博したバーガーやサイドメニューなどを期間限定で発売。

今年で発売95周年を迎えるロングセラーブランド「明治ミルクチョコレート」は、過去のデザイン変遷を楽しめる「明治ミルクチョコレート復刻版箱」を、2021年9月7日から期間限定で全国にて発売しました。

中でも今話題となっている「復刻版」といえばアサヒビールが28年ぶりに復活させた缶ビール「アサヒ生ビール」でしょう。

主力の「スーパードライ」に続く「第2の柱」に位置づけたいとして今年9月14日に発売しましたが、予想を大幅に上回る好調ぶりから販売の一時停止を発表しました。

アサヒビール「アサヒ生ビール」

画像:アサヒビール プレスリリースより

本記事では、なぜロングセラーブランドが過去に販売をやめた商品を復刻版として発売するのか、その狙いをマーケティング観点から3つの視点で分析していきます。

本記事を書いた人

リコッタ
リコッタ

大学でマーケティングを専攻し、花王や食べログでマーケティングに5年以上従事。多くの新製品や新規事業を立ち上げてきました。

「復刻版」発売にある3つの狙い

狙い① 「復刻版」を「新発売」することで2世代を取り込む

ド世代が「懐かしさ」でブランドに帰ってくるのを期待

復刻版を発売する理由の一つは、昔を懐かしむファン顧客の需要の取り込みです。

もちろん復刻商品自体を求めるファンもいますが、その多くは、商品を通じて懐かしい過去の思い出や記憶を呼び起こすという体験も含めて購入しているのでしょう。

このメーカーの狙いは、復刻商品を懐かしんだファンが、またそのブランドに戻ってくることです。「懐かしさ」という付加価値をつけることで、他のブランドを購入していたユーザーのブランドスイッチを期待しているのです。

一度ブランドから離脱したユーザーを取り込むのは簡単ではありませんが、復刻版は一度離れた顧客を呼び戻す有効な手段となります。

リアルタイムに購入していない世代にとっては逆に新鮮に映る

一方で、その商品をリアルタイムで購入していない若い世代にとっては、見慣れない復刻商品は逆に「斬新」と感じられ、興味を惹く効果が期待できます。

例えば1890年から販売している花王のロングセラー商品「花王石鹸ホワイト」は、明治時代の復刻版パッケージを限定発売しました。

液体せっけんが多数を占めるいま、石鹸を使うのは主に年長者が中心です。

花王としては、レトロなデザインで若い世代から逆に「新しい」と感じてもらい、ブランドの若返りを図りたいという狙いがあります。

花王石鹸ホワイト 明治レトロ限定デザイン

画像:花王石鹸ホワイト 公式ホームページより

二兎を追う意味

このように、復刻商品の新発売には「懐かしさ」で手を伸ばす世代と、「新しさ」で手を伸ばす世代の二世代を狙っているのですが、二世代を狙う背景には少子高齢化があります。

メーカーとしては新たな世代獲得は必須ですが、10代や20代のボリュームは少なく、今後も先細りが続いていきます。
新商品によるインパクトも減少する中、ブランドの継続のためには、新世代の獲得と同時に、既存顧客の掘り起こしも必要です。

そこでロングセラーに再び光を当てることで、古くからのファンと新たなファンを、世代をまたいで獲得することができるのです。

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狙い② 新商品でなくても広告や販促の弾になる

新商品やチラシに載っている商品が、スーパーなどで山積みされているのをよく見ますよね。
山積みをすると店頭での売れ行きは大きく変わります。
こういった店頭での販促や、広告の弾になるというのも、復刻版発売のメリットです。

ロングセラー商品の場合、良くも悪くも安定して売れ続けているので、小売店としては特に手をかけないことが多いのです。
手をかけてもたまに販促を入れて安売りしたりするくらいです。

メーカーとしては、ロングセラー商品にも売上を伸ばす取っ掛かりが欲しい。
そして小売店としても売上の山を作りたい。

そんなメーカーと小売店の利害が一致するのも、復刻版の魅力です。
広告や販促を同時展開してイベント的に盛り上げれば、メーカーにとっては新規ユーザーの取り込みにつながり、小売店にとっても売り上げに直結しやすいのです。

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狙い③ 商品化コストや売れないリスクを下げられる

また、一度過去に販売したものは、発売までのコストや売れないリスクを抑えられるというメリットもあります。

例えば日用品の場合、新商品などを発売するまでには様々な市場調査や性能テスト、保存・輸送上の安定性の確認、デザイン決定と出稿…といった様々な工程を経て発売されます。

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一方、復刻商品の場合はこれらを一度クリアしているので、少しの変更を加えても発売までの工程を減らし、コストを抑えることが可能となります。

また、復刻版として登場する商品はかつてヒットを記録したものが中心となります。
新商品の場合、満を持して発売しても失敗するケースは少なくありませんが、復刻商品の場合は発売前から昔を懐かしむファン顧客の需要が一定数見込めるため、失敗のリスクを減らすことができるのです。

「復刻版」発売にある狙い まとめ

以上をまとめると、「復刻版」発売にある狙いは以下3点と考えられます。

「復刻版」発売にある企業の3つの狙い

  • 「復刻版」を「新発売」することで2世代を取り込む
  • 新商品でなくても広告や販促の弾になる
  • 商品化コストや売れないリスクを下げられる

ロングセラーブランドが定期的に復刻版を発売する背景には、理にかなった狙いがありましたね。

他にもヒット商品の裏側なども解説していますので、ぜひアイデアの参考にしてみて下さい。

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