【企業マーケティング】日清食品のぶっ飛んだ広告に隠された3つの狙い

マーケティング実践

SNSで“バズる”ことが思わぬヒットにつながる時代。「SNSで話題化させたい」という思いは、今ほとんどの企業が抱えていながらも、「何がバズるのか読めない」という課題も同時に抱えているでしょう。

そんな中、遊び心あふれるプロモーションを通じて度々話題を集めている企業があります。ロングセラー商品「カップヌードル」でお馴染みの「日清食品ホールディングス」です。

今年5月に公開したCMでは、8つの味のCMを「8画面」に分割した画面で同時に流すという異例の手法で話題となりました。

カップヌードルCM「8つの味篇」公開ツイート

この9月から放送されたカップヌードルCM「辛麺ダンス篇」ではストーリーはなく踊っているだけの動画ですが、なんだかクセになる不思議さがあります。

カップヌードルCM「辛麺ダンス篇」

日清食品のCMを見たことがある方は、「なんでこんなぶっ飛んだことばかりやってるんだ?」「これで購入につながるの?」と思ったことはありませんか?

本記事では、同社の攻めた広告に隠された狙いについて、マーケティング観点から3つの視点で分析していきます。

本記事を書いた人

リコッタ
リコッタ

大学でマーケティングを専攻し、花王や食べログでマーケティングに5年以上従事。多くの新製品や新規事業を立ち上げてきました。

日清食品がぶっ飛んだ広告を作る3つの理由

理由① 見ている人に「ツッコミ」を入れてもらうことで完成する

通常、CMは商品の魅力をいかに伝えるかが重要になるところですが、日清食品はあえて訴求ポイントをぐっと絞って、遊び心を盛り込んだ演出を重視しています。

なぜ商品についてよりも遊び心を重視しているのか。それは、見ている人の印象に残すことを最優先しているからです。

「印象に残る」とはどんな場合でしょうか。それは、何かしらの「関心」を持つことでしょう。好き、嫌い、どうして?など、何かしら思うところがあれば記憶のどこかには残ります。逆にいえば「特に何も思わない」ということが“印象に残らない”ということになります。

同社のCMでは、関心を持たせる手法として、消費者に「ツッコミ」を入れてもらうという手法をとっています。

例えば、今年3月に発表した「カップヌードル」の欧風チーズカレー味のCMでは、ひたすらチーズをかけて「一番混ぜにくい」と自虐して終わるという構成になっています。

見た人は「いや混ぜにくいって自分で言ってるし」「なぜ庄司さん・・・?」と心の中でつい“ツッコミ”を入れてしまうでしょう。

カップヌードルCM「パラパラパウダー 篇」15秒

ツッコんでしまうということは、何かしらの「関心」を持っていることになります。

つまり同社の広告は、消費者にツッコミを入れてもらうことで関心を持たせ、記憶に残すところまでを設計しているのです。

またTwitterを見ると、ついツッコミたくなったり、ツッコミのコメントが面白いといったツイートがバズりやすい傾向があるので、SNSとの親和性が高いともいえます。

奇をてらったコンテンツに見えますが、視聴者に「ツッコミ」を入れてもらうことで完成するという狙いがあるのです。

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理由② 攻めているようで「古くなる」リスクを回避

この日清食品の手法は、話題性はあるものの、商品について何も伝わらなかったり、尖りすぎて逆にマイナスに捉えられてしまうリスクも抱えています。

なぜそんなリスクを冒してまで攻めているのか。実は攻めているようで、「古くなる」というリスクを回避しているとも捉えられます。

日清カップヌードルが誕生したのは1971年。誰もが一度は食べたことがあるでしょう。

ましてやカップ麺のメイン顧客は10代~20代の若者世代。新しいものに敏感な世代から選び続けてもらうことは、容易ではありません。

誰もが知っていて食べたことがある商品だからこそ、当たり前のブランディングを行っていれば飽きられてしまう。飽きられてしまえば、あっという間に「古いもの」認定されてしまう。

そんなリスクを、攻めの姿勢で回避しアップデートし続けているのです。

「魔女の宅急便」「サザエさん」「ワンピース」など有名な国民的なキャラクターを現代の高校生として描いた「HUNGRY DAYS 編」はまさに日清の思いが込められているように感じます。

カップヌードルCM「HUNGRY DAYS ワンピース ビビ編」より

すでに完成されたものも、あえてアップデートして新しい価値を生み出す。攻めの手法は、実は古くなるリスクを回避する最大の守備でもあるのです。

理由③ 合理的判断ではなく「なんか気になった」で買う人が結構いる

「攻めの姿勢はわかるけど、これが購買につながっているのだろうか…」

そう思われる方もいるのではないでしょうか。答えとしてはYESです。
その理由の1つには食品カテゴリーならではの特性があります。

皆さんはカップ麺を買うときにどんな基準で選んでいるでしょうか。

食品の選択基準といえば「味」「価格」「手軽さ」「安全性」などが挙げられますが、例えばカップ麺でそこまで総合的・合理的に考えて買う人は多くありません。

カテゴリー特性として、価格が安く、一度で消費し終わる(シャンプーのように何か月も継続して使わない)ものなのでブランドスイッチしやすく、その時の気分で購入する人が結構います。

またカップ麺をECで買う人はそこまで多くないでしょう。多くの人はコンビニかスーパーで沢山の商品が並ぶ中から選んで決めます。

そうなると「これ知ってる」「これ気になってた」など、多くの商品からいかに「目に留める」かがとても重要なのです。

人はよく知っているものや関心があるものに対して目に留まりやすい傾向があります(これを「カクテルパーティー効果」といいます)。

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そして日清の「ツッコミ待ち」の攻めた広告はここに効いてきます。お店で迷ったときに「あ、この商品あのCMのやつか」と想起させ、まず「目に留める」という第一段階を突破しやすいのです。

また、日清の広告はぶっ飛んでいますが、商品はかなり真面目です。
定番品・企画品ともに「しょうゆ」「豚骨」「トムヤムクン」など、すでに世の中にある人気の味を中心に商品化し、どの商品もその美味しさには定評があります。

「あ、これ知ってる」で消費者の目に留め、「カップヌードルだしきっと美味しいだろう」という信頼感で購買につなげる。これが日清の攻めた広告の狙いです。

日清食品がぶっ飛んだ広告を作る3つの理由 まとめ

以上をまとめると、日清食品がぶっ飛んだ広告を作る狙いは以下3点と考えられます。

日清食品がぶっ飛んだ広告を作る3つの理由

  • 見ている人に「ツッコミ」を入れてもらうことで完成する
  • 攻めているようで「古くなる」リスクを回避
  • 合理的判断ではなく「なんか気になった」で買う人が結構いる

ぶっ飛んでいるようで実は理にかなっている、日清食品ならではのマーケティングでした。

攻めた手法はなかなか打ちにくい時代ですが、消費者を常にワクワク楽しませてくれる同社のマーケティングをこれからも応援していきたいと思います。

他にもヒット商品の裏側なども解説していますので、ぜひアイデアの参考にしてみて下さい。

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